静かで確かな温度 5P
今互いの内を締めるわだかまりを忘れたわけではないが、こうして大人しくしていると意外と従順で可愛い生き物だと思う。 なんとなく顔を上げ殺生丸の後頭部を見た。 形の良い丸く小さい頭。 何とも言えず手触りの良い綺麗な髪。 さっきまで頬擦りしていた髪。 俺は無言で髪を撫でた。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 殺生丸はほんの少し反応したが、何も言わない。 今度はポン、ポン、とごく軽く頭を叩いてみる。 震動で顔と身体が僅かに揺れている。 さすがに文句の一言か拳の一発でも飛んでくるかと思ったが、殺生丸は何も言わなかった。 だから今度は髪の間に指を入れ、地肌に触れながら髪を梳いた。 「・・・ッ・・・」 そこで初めて反応らしい反応が返ってきた。 頭皮もヒトによっては性感帯の一部だからな。 お前が弱いのは知っている。 「・・・っ」 「・・・・・・」 わざとそういう手つきで煽るように髪を梳き続ける。 少し眼を伏せたのは気持ちが良いのか。嫌なのか。 もっと見せろよ。反応を。 俺が今、トチ狂ってその首絞めたらどうすんだよ? 顔を合わせれば刀を抜いていた。鉄砕牙を狙っていたあの頃のように。 殺すくらいの本気を見せろよ。 もっと執着しろ。俺に。 りんにほだされて丸くなったもんだな、お前も。 ・・・穏やかになんか寝させてやらない。 メチャクチャにしてやりたくなる。 優しく梳いていた手を荒々しく動かし、流れに逆らうようにグシャグシャにしてやった。 「ッ・・・・・・!!」 「・・・・・・」 「貴様・・・・・・」 ついにキレた。 殺生丸は髪を掻き乱され後頭部がボサボサになったまま、鋭い眼光で俺を睨み付けてくる。 俺は揉みくちゃになった髪を更にグシャリと掴み、顔を仰け反らせ、その首筋に舐めるように唇を這わした。 ついさっきまであんなに激しく抱いたのに、もう何の熱も残していない涼しい顔して。 まだ身体の中に残っているはずだろう。 疼かねえのかよ。 「・・・ッ・・・犬、夜叉・・・ッ」 勢いに押されて崩れかかる身体を殺生丸は立て直そうとするが俺は力任せに横倒し、そのまま押さえ込むように圧し掛かった。 「っ・・・ッ・・・いい加減に・・・ッ」 「嫌なら逃げろよ。」 逃がさない。 襦袢が着崩れ露わになった白い鎖骨に少し噛み付くように吸い付いつく。 「ッ・・・っ・・・」 とっくに逃げられないから逃げないんだろう? 「・・・ァ・・・ッ」 本気で嫌なら俺を殺すしかないからな。 「ッ・・・ハ・・・」 俺が生きてる限りお前は俺のもんだ。 死んでなんかやらない。 襟を拡げながら桜色の突起を甘噛みする。 僅かに眉を寄せ、掠れた喘ぎの中に混じる快楽の色。 焦らすつもりが焦らされて煽られるのはいつだってこっちだ。 前髪を払い、藍色の三日月に口付けを落とし、その唇に触れ舌を挿し入れる。 途端、激痛が走った。 「ッ!!い・・・ッ・・・」 噛まれた。 それも容赦なく。 いや、容赦はあったのかもしれないが思いきり噛んだだろう。 この痛さは半端じゃない。 舌から溢れた血が滴り殺生丸の口元に落ちた。 「・・・・・・」 殺生丸は無表情に舌で舐め取る。 そして少し不愉快そうに自らの手で口元を拭った。 半妖の血は不味いのか。 それとも俺との口付けが今日は嫌だという無言の拒絶か。 先程までの愛撫でほんのり上気し紅く色付いた目元。 なのにその金色の眼はどこまでも冷たく澄んでいて。 パンっと軽くその頬をはたいた。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 叩かれて僅かにその顔は傾いたが殺生丸は動じない。 苛々する。 一人だけ昂っているみたいで馬鹿みたいだ。 「・・・今日は乗らない。」 「・・・・・・」 何言ってんだ、今更。 「ッ!!・・・っ」 身を起こしかけた殺生丸の両肩を掴んで叩き付けるように床へ押さえ込んだ。 力任せの衝撃にさすがに顔を歪めたが、すぐにいつもの涼しい顔。 そして俺を見て、両の口端を僅かに上げた。 りんに見せた顔とは違う、温度のない笑み。 嫉妬を紛らわす為にやたら引っ付き、ドス黒い思いを相手で打ち消そうとした焦燥を見透かされているよう。 でも昔のように見下す笑みでも嘲笑でもない。 何でそんな綺麗な顔で笑う。 俺が欲しいのは。 もっと。 「っ・・・チッ・・・!!」 「・・・ッ・・・!!・・・ク・・・ッ」 骨が軋みそうなほど掻き抱き、首筋、肩、胸を舐め上げながら暴力的に身体を弄る。 自らの口に含み僅かばかり濡れた指を相手の後ろへ捩じ込む。 抱く腕の圧迫と荒っぽい挿入に殺生丸は苦しそうに喘いだ。 |
||
5P | ||
← back next → |