「ッ・・・ゥ・・・」
「・・・殺生丸・・・」

無意識にその名を口にし、ゆっくりと腰を引く。
肉杭から解放され弛緩したそこから白濁がドロリと流れ出た。
それを円を描くように指を滑らせ塗り付けるが半ば朦朧とし、さして反応はない。
もっと翻弄してやりたい。
動かしながら指を挿し入れる。

「・・・っ」

少し腰を捩ったのは抵抗のつもりか。
入口を拡げるように前後させながら中を弄る。
洞穴に響く卑猥な濡れ音。

「ッ・・・や、・・・め・・・ッ・・・ァ・・・ッア・・・ッ」
「・・・此処ですか?」

僅かに腰が跳ねたのを感じ探り当てた箇所を執拗に責め、もう片方の手に納めた相手の竿を一気に擦り上げた。

「・・・我慢しないでイってください。」

見計らって絶妙な機で指を引き抜くと、すぐに達した。

「アァッ・・・!!」

艶めいた喘ぎ。
普段見ることのない表情。
そんなイイ顔されたら鎮めた熱がまた疼く。
見る間に兆した自身を相手の窪みへと宛がう。

「ハァ、ハァ・・・ッ・・・ゥアァッ!!・・・ク・・・ッ・・・ァ・・・ッ」

もう弛く傷付ける心配はないのだからと、勢いよくぞんざいに貫いた。
突如体内にめり込んできた重い塊に再び腸壁を圧迫され、さすがにキツイのか。
苦しげな息遣い。
そんな相手に構うことなく激しく突き上げる。
限界の体力の中己の快楽だけを追って穿つ。
男同士の交接がどんなものか。貴方だって知っているだろう。
元来男は性に果てしなく貪欲。女とは感覚が違うのだ。
点火してしまえば最期、燃え尽きるまで終わらない

まだ足りない。  もっと欲しい。

貴方に溺れる。








陽の射さない朝。
雪は止んでいるが分厚い雲に覆われ灰色の空。

「もう行くんですね。」

静かに外へ踏み出した後ろ姿に声を掛ける。

「殺生丸。」

あんなに乱れたくせに。
別人のような凛とした背中。

ゆっくりと洞穴から離れてゆく。
どうしたら貴方をもう一度引き留められるだろうか。

「好きですよ。貴方のこと。」
「・・・興味はない・・・」
「ふ・・・」

予想通りの答え。

妖怪に縋った自分も  気まぐれに人間に応えたアンタも  どうかしていた。

訊きたい疑問が言葉にならない。
何故、と問うたところで貴方は応えない。
答えを探すこと自体きっと無意味で。

この情事に駆け引きなどなかった。
ただ貴方に惹かれ猛烈に欲し抱いた。
それだけのこと。

今回の事を私が犬夜叉に暴露したって貴方は何ら構わないのだろう。
犬夜叉が喚き散らしたとて結局崩れることのない関係。
絶対的な繋がり。

「・・・殺生丸。」

でも  呼ぶ声に今度は僅かに振り返った貴方の  その眼は。

―――――・・・また・・・御逢いしましょう。」
「くだらん。」

もう互いにいつもの顔。意味を持たない他愛ないやり取り。
再び歩き出し少しずつ遠ざかってゆく。
その背中は次第に積雪の蒼白い山中へと消えていった。

「・・・・・・寒い・・・」

また降り出す前に私も村へ戻ろう。

縋り付いた私を受け入れたのはただの気まぐれ?
でもおかげでこの先に少しの期待が生まれた。
貴方を見る度にゆっくりと着実に想いは根付いてゆく。



生きることへ心的飽和。
一晩でいい。
己の存在を貴方の中に求めた自分。


・・・一瞬の表情。

あのときの貴方の眼の奥に  何か通ずるものを感じたのは己だけだろうか。

遙か永き刻をゆく妖。

遠い死を迎えるまでどんなことを胸に抱き生きるのか。
誰にも解らない。

誰かを何かを想うほど  去来するのは計り知れない孤独なのかもしれない。











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緩やかに 穏やかに 確実に

1P  2016/12/22 執筆
2P〜4P  2016/12/28 執筆

当方からすると弥勒の恋愛って本来しっとり静かで叙情的なイメージなので
「静かだけど熱情的なエロ」を目指して書きました。
意地悪なブラック弥勒も好きですけどね(笑)。
兄は浮気という概念はなく、弥勒に縋るように求められ拒む理由もなかった
ので応じた、という感覚です。
生きる意味を模索する弥勒に何か思うところがあったのかもしれません。