「止せ・・・ッ!!」
「・・・そんなにイイか・・・?」
そう言った次には死神鬼の頬に衝撃が走った。
殺生丸が拳で死神鬼を殴ったのだ。
顔が切れ血が唇を濡らしたが、それでも死神鬼は薄ら笑い、なおも殺生丸の体を弄る。
これまでと違う、明らかに殺生丸を悦へと導く為の指が肌の上を滑る。
涙こそ流していないが、殺生丸の眼は僅かに潤み、目尻には薄っすらと涙が溜まっていた。
全身からの拒絶。
誇り高き化け犬の血を引き、一族の中でも最強であり妖怪の中で頂点に君臨した父・闘牙王。その血を血統正しく受け継ぎ、完全無敵であった己を力で支配し制した死神鬼。
そんな男の愛撫など許せない。
誰の指図も受けない。己の事は己が決める。
この肌身に触れていいのは・・・
一瞬、赤い水干の・・・無茶苦茶でいつだって必死だった半妖の姿が浮かんだ。
“犬夜叉”――――――・・・
「・・・わしに感じるのがそんなに嫌か。ククク・・・」
直接的な言い方。
弄る指先にすぐに現実に引き戻された。
だが、死神鬼のやり方は確かに的を得ていた。
殺すべき憎悪の相手に悦を感じれば、完全に支配される。崩れる。
死神鬼は完全なる屈服を求めているのだ。
やり方などどうでも良い。何でも良い。
報復に正義などない。
「ア・・・ッ!」
「・・・・・・殺生丸・・・」
尖った耳の淵を舐められ、胸の突起を甘噛みされる。
「ク・・・ア・・・ッ」
拒みながらも徐々に脱力していく。
生理的快楽に理性が侵食されていく。
襦袢の腰紐を解かれ、死神鬼の口に性器を含まれる。
どう抗っても理性が飛ぶ。
己の中に入った指先が快楽の壺を探り、抉る。
巧みな死神鬼の手管に、死神鬼の熱が付近を掠めたのすら分からなかった。
気付けば熱い塊が中へと入り込んできていた。
「・・・辛くはないだろう?」
「ッ・・・う・・・アア・・・ッ!!」
そこで初めてハッと我に返り、殺生丸は死神鬼から逃れようと再び抗った。
「・・・フ、今更何を拒む・・・」
ゆっくりと腰を揺らしながら死神鬼は嘲笑した。
そして殺生丸の耳元で囁いた。
「お前はわしに感じたのだ・・・認めろ。」
バシッ
瞬間、殺生丸は死神鬼の頬を叩き、腕を掴んで死神鬼の体を追いやろうと渾身の力を込めた。
鋭利な爪が容赦なく死神鬼の腕に食い込んだが、死神鬼は構わずに腰の律動を速めていく。
「・・・殺生丸・・・所有の標を刻み込んでやろう。追憶の傷跡を・・・!!」
「ヤメ・・・ッ・・・アアアッ!!」
奥深く突き上げられ、意識が飛びそうになる。
だが、既に悦で満たされた身体には痛みだけではないモノが込み上げ、ますます殺生丸を追い詰め苦悶させていく。
眼の色が。
髪の色が。
触れ合う肌の感触が。
違う。
赦したのはこの男じゃない。
殺生丸はひたすらにあの赤い姿を想った。
他に何の感情があったわけじゃない。
ただ揺れる視界の中、自分を懸命に追っていたあの弟のにおいがひどく懐かしく思い出された。
激しさの中でそれぞれの思いが交錯する。
「・・・殺生丸・・・ッ」
怨むならば宿命のもと生まれついた己を呪え。
この闇に染まれ。堕ちろ。
わしを求めろ。
全ての歯車はお前が冥道残月破を受け継いだ時に回り始めていたのだ。
狂気の刃を隠したままな・・・!
そして死神鬼は殺生丸の腰を一層引き寄せ、己の飛沫を殺生丸の中へと注ぎ込んだ。
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