烈火    13P




 

 見つめ合う二人。
 互いに視線を外さない。

 澄んだ深い金色の眼。

 犬夜叉は兄の眼を見て確信した。
 やっと殺生丸が此処へ来た理由を理解した。


 ああ・・・・・・解った。
 二人で旅をしたこの数ヶ月。ずっと寄り添い傍に居たのに、決して満たされる事は無かった。
 それはお前も同じだったんだな。

 想いが行き場を無くしてた。
 互いの心は同じなのに。

 ―――――――・・・だからお前はこの山に来たんだろう。
 そして俺を此処へ招いた。
 この川に。

 この場所は・・・俺が殺生丸に二度と触れないと誓った、あの時の川。
 ずっと大事にしていた記憶。
 雪のせいで景観が変わり、気付かなかったが間違いない。自分勝手な思慕と愛欲で無理矢理犯した殺生丸を清めに来た場所。

 お前は・・・憶えていたんだな・・・この川での事を。
 だからこそ意図的にお前は此処へ来た。


 傷を癒すつもりが情欲の炎がチリチリと燃え上がっていく。
 俺はそれをずっと押し殺していた。

 でも、もう。

 保護的な慈善愛など必要ない―――――――!!


 犬夜叉は駆け、ぶつかるように殺生丸を抱き締め、口付けた。
 殺生丸の腕も犬夜叉の背を強く抱き締めている。
 二人はそのまま絡み合い、縺れ込むように川の中へと倒れこんだ。
 水飛沫が上がる。
 冷たい水に身体が浸ったのも気にならない。
 貪るように舌を絡ませ接吻する。

 抑えていた想いが爆発する。
 求めていたのは互いに同じ。

 犬夜叉は殺生丸の襦袢の結びを解き、前を開かせ、素肌に指を這わせながらこれまでの様々な事を思った。

「・・・殺生丸・・・ッ」
「・・・ッ・・・犬、や・・・しゃ・・・」


 俺の名を呼ぶ殺生丸の声。
 ・・・ずっと殺生丸を抱きたかった。

 だけど、こんなはずではなかった。

 あの日どれだけの覚悟で誓ったか。
 離れたのは、他の奴に遣る為じゃない。

 でもお前の幸せを思い、りんとの事を見守っていこうと思ってた。
 そのりんを失い・・・深い哀しみを負ったお前を、今度こそ俺が癒したかった。嫌われててもいい、守ってゆきたかった。

 ・・・・・・それを・・・・・・あの男がぶち壊し奪った。

 消しても消しても浮かんでくる残像。

 暴行を受けた痕。
 捲れた裾から覗いた、脚を汚す鮮血と白濁したモノ。

 死神鬼は妙な術で殺生丸を貶め監禁し、高潔なる操をメチャクチャにした。

 侵蝕された魂は永遠に血を流す。
 妖力は取り戻しても、もう以前の殺生丸ではない。

 刻み込まれた残酷な現実が体の奥深くで疼いて殺生丸を苛み続ける。

 なのに、あの男は生きている。
 臓腑を焼き尽くしそうな程の遣り切れない激情が俺を苛む。




 バシャッ

 激しく絡み合う水音だけが辺りに響く。

 真冬の深い山中に兄弟二人きり。
 水に濡れて雪にまみれて、抱き合う。

 首筋に掛かる熱い吐息。
 ヒトの舌はこんなにも熱いものなのか。
 肌に触れる指先が快楽のその先へと自分を導いてゆく。
 殺生丸は全身全てで犬夜叉を感じていた。

「・・・ッ・・・アッ・・・」

 犬夜叉は殺生丸をうつ伏せさせ、濡れた髪を優しく除け、襟足から背筋、腰へと丹念に口付けた。
 そして足を開かせると、尻を左右に割り、腔を舐めながら徐々に舌を深くへ埋め込む。
 熱いものが中でやわやわとじっとり蠢く感触に、殺生丸は堪らず乱れ喘いだ。

「・・・ウ・・・アア・・・ッ」

 殺生丸は浅瀬の川辺で水中に膝を着き、半身を雪の陸地に上げ、大腿が浸った状態で犬夜叉のこの愛撫を受けていたが、そのまま犬夜叉に自身を握られ一番感じる部分を扱かれる。
 殺生丸は己の限界を悟り、犬夜叉もまたその手に納めた殺生丸の感触に、それを感じた。

「ッ・・・ハ、・・・アッ・・・!!」

 殺生丸の自身がビクビクと麻痺し、半透明の白濁が犬夜叉の手から溢れる。
 それはポタポタと水面へ落ち、僅かな水音を立てた。

 犬夜叉は達した事で脱力したように崩れた殺生丸を抱えるように仰向けさせ、頬や前髪に付いた雪を軽く払ってやり、覆い被さるように接吻をした。

「殺生丸・・・」

 まだ呼吸が整っておらず殺生丸の胸部は上下に動いていたが、犬夜叉は脚を持ち上げ開かせた。
 殺生丸の眼を見、拒否の色が無いのを確認すると、犬夜叉は硬く熱を帯びた自身を殺生丸の腔に押し当
てた。


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