親愛    2P




 

 
 そしてそれは、その夜――――
 皆が寝静まった後の、静かな縁側から聞こえてきたものだった。

俺は、昼間見た二人の光景が脳裏をチラつき、中々寝付けずにいた。だから別に聞き耳を立てていた訳ではなかったのだが、あのりんの事で何やら話をしていたようだったので、つい割って入ってしまった。 

「お前ら、こんな夜更けにコソコソ何話してるんでい。」

そこには楓ばばあと、珊瑚が居た。

「犬夜叉」
「なんじゃ、お前起きていたのか。」
「・・・ちょっと寝付きが悪くてよ。風当たりに来た。」
「そう。」

二人はまた、りんの事を話し始めた。

「・・・りんももう年頃じゃな。」
「そうだね。・・・こないだお赤飯も炊いたしね。」
「赤飯?赤飯がどうしたんでい。」
「・・・お前には、関係の無い事じゃ。」
「そうそう、犬夜叉は無知過ぎるしね。」
「なんでい、そりゃ。」

 二人は苦笑し、クスクスと笑っていた。

「りんももう12、3歳になる女の子だからね。」
「そうじゃ。もうそろそろかのう・・・」
「うん・・・。あいつも考えてんじゃないかな。」
「まあアレもそういった事にはズボラそうじゃが、犬夜叉程、鈍感ではないかの。」
「あれで結構、あいつなりにりんのこと大切にしてるのは分かるしね。」
「ちょっと待て、一体何の話してるんだ!?」
「・・・りんの祝言の話さ。」
「・・・しゅ、祝言・・・!?あいつまだガキだろ!」
「何言うか、犬夜叉。村の少女は皆、15歳になる頃には嫁いでおる。」
「そうだよ、りんだってもういつだってお嫁にいける身体になってる。早い子は、りんの歳にはもう嫁いだりしているんだよ。」
「・・・っけどよ、殺生丸はどうなるんだ。あいつはりんを可愛がってるんだぞ。分かってんだろ。」

 俺は、殺生丸がもうここへ来る理由を無くすのではないかと思い、不安にかられた。

「大体、相手は誰なんだ。・・・まさか琥珀か!?」
「・・・ふっ・・・犬夜叉ほんと鈍感だねえ。」
「ほんとじゃな。お主、今まで何を見とったんじゃ。」
「・・・まあ琥珀でも問題はないけど、琥珀はずっと修行に出てるし、それに。旅先でお世話になった村に、好きな子居るみたいだよ。」
「・・・じゃあ、相手は誰なんだ、縁談でもあるのか。」
「犬夜叉、ほんとバカだね。」
「んだとぉッ!」
「・・・殺生丸だよ。」
「!―――――
「お前、気付かなかったのか?今まで。」
「・・・りんの殺生丸を見る目は、物心付いた時から、慕っておる目じゃった。」
「誰の目にも明らかだよ。女同士ならなおの事・・・私だって、すぐに分かったよ。」
「りんは殺生丸に恋情を抱いておる。」
「そうそう、それにあいつだってりんの気持ちには、当に気付いてるんだよ。」
―――・・・ツやめろ!」 


 ・・・それ以上言うな・・・・・・!!


「・・・どうしたんだよ、犬夜叉。」

 俺が本気で怒鳴ったので、二人は少し驚いたような顔をしていた。

「・・・憶測だろ、そんなの」

 ・・・否、俺だって分かってる。

「そんな事ないわよ、りんの顔見れば分かる。」
「殺生丸が訪れた時のりんは・・・まるで花が咲いたように笑うからの。」
「ふふ、ほんとだね。」

分かってる。分かっている、そんな事。
 ・・・誰よりも俺が一番、殺生丸を見ているんだから――――・・・!

「・・・大体、殺生丸のほうはどうなんだよ。あいつは妖怪だぞ。俺と違って半妖でもねえ。それに、あんなガキなんか相手にしねえよ。」
「・・・まるで、ヤキモチ妬いてるみたいな言い方だね、犬夜叉。」
「・・・っ!んだと、」
「だって、殺生丸をりんに取られるのが嫌って言っているように聞こえるよ。」
「!!・・・」

 珊瑚はいつものように、馬鹿にしたように笑っている。

「・・・とにかくよ、りんには、もっと村のイイ男が居るだろう。何も殺生丸じゃなくたって・・・」

 ここまで言って、ふいに楓ばばあが口をついた。

「・・・お前まさか・・・」

 俺はドキッとした。

「犬夜叉、お前りんに恋心を抱いているのではあるまいな。」

 !?・・・

「ええ!?、そうなのか、犬夜叉!」
「まったく・・・お前は、四魂の玉を利用して妖怪になろうとしたり、人間になろうとしてみたり・・・昔から強欲であったが、他人の恋路にまで手を出すとは。」
「・・・うるせえ!!」

 オギャーーッ!
 
 赤子の声が響いた。・・・珊瑚の4人目の子供だ。


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