-ZAN-    6P




  


「ウ・・・ッ、ア・・・!!」


 灼けるように熱い。

 妙な液体が腸(はらわた)を浸蝕してゆく。

 殺生丸は悶え喘いだ。

 今や微々たる抵抗すらままならない身体を必死にくねらせ逃れようと苦痛を訴えるが、弥勒は止めない。


「・・・この香油には閨房薬・・・言うなれば媚薬が入っているんです。すぐに快くなりますよ。

「・・・ゥ・・・ッ」


 苦しい―――――――――

 媚薬だか何だか知らないが、妖力がろくに使えない今の自分にとっては得たいの知れない薬品に過ぎない。

 この法師は自分を殺す気なのか。


 人間が調合して人為的に効力を得る薬など、殺生丸にとっては先程の御神酒に加えて更に体内に毒を注がれているのと同じだ。

 この堂を出ないかぎり酒の霊力も媚薬の毒気も浄化出来ない。

 殺生丸の身体はビクビクと悶えた。


 すべてを殺生丸の中へ流し込んだところで弥勒はようやく香油の筒を離した。

 殺生丸は弥勒に足を抱えられ秘所を晒したままグッタリしている。

 だが弥勒はとくに気に留めなかった。

 既に結界や酒の霊力のせいで弱っている殺生丸。まさか快楽へ導く為の香油が容態を更に悪化させたとは思いもせず、異変に気付いていないのだ。

 無論弥勒は初めから犬夜叉の兄である殺生丸を殺すつもりなどない。


 拡げられ貫かれたままの殺生丸の肉襞からは入りきらなかった香油がトロトロと溢れ出ている。

 弥勒は再び指の注挿を始めた。

 十分潤い滑りが増したのだからと、少し乱暴に抉るようにして掻き回し前後させる。

 馴染ませるように内側の腸壁を擦り上げる度に指の間からは香油が溢れ、ポタポタと床へ零れ落ちる。


 苦しげに乱れる殺生丸の姿はなんとも魅惑的で、壮絶に美しく綺麗だ。

 こんな殺生丸を犬夜叉は幾度も目にしている――――――――――

 そう思うとドロドロと自分の内から黒い感情が湧き上がってくる。

 どうせ何度も犬夜叉を銜え込んでいる穴だ。多少荒くしたってどうとない。

 弥勒は香油が飛び散るほど指の注挿を速め、抉りまわした。

 グチュッ、グチュッと先程よりも激しい濡れた摩擦音を堂内に響かせながら、巧みに腿、胸の飾り、首へと舐め、愛撫する。


「・・・ア・・・ゥ・・・ッ・・・」

「・・・・・・媚薬・・・イイですか・・・?」

「・・・・・・法師・・・ッ・・・もう、止せ・・・ッ・・・」

「・・・ダメですよ・・・もっと快くしてからイかせて差し上げます・・・・・・」

「アァッ・・・!!」


 四本目の小指までを入れたとき殺生丸の腰がビクつき、身を強張らせた。

 さすがにキツイか。

 今にも裂けそうなほど拡がっている。でも少しの痛みくらい伴わせてやりたい。

 弥勒はそのまま指を進めた。

 たっぷりと注がれた香油のせいでヌメり、奥へと進める弥勒の指を意と反して飲み込むが殺生丸は下腹部の焼かれるような熱さと侵蝕を繰り返す異物の圧迫に苦悶した。


 激しく挿入を繰り返しながら弥勒は弥勒で内心苦悶していた。

 もう自身の疼きも限界に近いのだ。

 本来ならばこのまま殺生丸のモノも扱き上げイかせてから自身を挿入したかったが、その余裕がない。

 弥勒は甲の半ば近くまで入れていた指を一気に引き抜いた。


「ウゥッ!!」


 弥勒の指に絡み付いていた肉襞が引き攣れ、殺生丸は激痛に呻いた。

 法衣を捲り上げた弥勒の付け根からはすぐにでも爆ぜてしまいそうなほど硬く張り詰め反り勃った男茎が伸びている。

 鈴口は先走りの粘液でぐっしょり濡れていた。


 弥勒は殺生丸の膝裏を押し上げ足を折り曲げるようにして抱えなおし、体位を性急に整えた。

 女のそれのようにそこは濡れ光り、自分の施した香油がまるで愛液のように内からジュクジュクと滲み出ている。

 あとはそこへ自身を打ち込むだけでいい。


 誰も触れられもしないようなあの殺生丸を、自分が翻弄し尽くした。

 残酷な高揚感。

 でも貴方が悪いんですよ―――――――


「・・・もう挿れますよ・・・」

「・・・・・・」

「殺生丸・・・」


 自身を殺生丸の蕾にあてがい、反応のない殺生丸の顔をチラと見たときだった。

 一瞬全身にドクッと脈打ったように微動し弥勒は静止した。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・やれやれ・・・」

「・・・・・・」


 弥勒は不動のまま、短く小さな溜め息をついた。


「・・・初めて男を知った処女じゃあるまいし・・・・・・」

「・・・・・・」


 殺生丸の涙。

 背けたままの横顔の頬に、涙が伝っているのが見えたから。


「・・・殺生丸・・・」

「・・・・・・」


 前髪で隠れた目元。

 髪をそっと払い、目尻を指で拭ってやるが、殺生丸はこちらを見もしなかった。


 ・・・自分の負けだ。

 いや、そんなの最初から判りきっていた遊戯だった。

 でももうひとまず今日のところはこちらが諦めるしかない。

 ・・・・・・仮にも仏を信仰している法師の身。我ながら善心を捨て切れなかったというところか。


 自分のやろうとしていたことは・・・勝手に火付いた色欲を妖怪の身体で発散しようとしていただけのこと。

 姑息に罠を仕掛け、妖怪には不利な堂に閉じ込め、陰湿なやり方で犯そうとした。

 あの殺生丸を。


 この大妖怪はやはり犬夜叉のものなのだ。

 あくまで自分を拒み、どこまでも純血で純心。

 身体を穢して横取りしようなんて。浅ましい。

 燃え上がったのは自分だけ。



 
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