「・・・・・・」
殺生丸は何も言わない。抗わない。
自分は謝るべきなのだろうか。
でもそれは違うと思う。
だって弥勒との事は絶対に事実なのだ。
だからこそ殺生丸は俺の愚行を受け入れ、その上での今。
「・・・殺生丸・・・」
「・・・・・・」
犬夜叉は背後から抱き締めたまま殺生丸の首筋に口付けた。
襟の合わせから手を滑り込ませ胸元を弄る。
そうしながらも徐々に正面へと回った犬夜叉。
愛撫も接吻もなしに犯し続けた行為を塗り替えるように、熱情的に口付け舐め上げる。
今回の事が起こる前の濃密なあの夜のように。
求めていたのは、したかったのは、こういうこと。
それは殺生丸も同じで。
「・・・ッ・・・」
次第に体勢が乱れ、絡み合いながら地へ崩れる。
袴の上からでも分かるほど既に主張している硬い熱。
だが、いつものような強引さがなく今一歩踏み込もうとしない何処か遠慮がちな犬夜叉の手つき。
大腿をなぞり上げるのに、そこを避けるように腰骨へと移動する。
犬夜叉は殺生丸の身を案じているのだ。
表面上は元通りでも、まだ痛みを感じるのではないかと。
次には殺生丸の手を取り、今はもう傷一つ残っていない手首を舐め始める。
ネットリとひと通り舐め終えると、今度は指と指の間を舌先でチロチロと舐める。
「・・・っ」
押し寄せる快感に殺生丸から喘ぐような短い息が漏れる。
まるで性感帯を刺激されているようにじくじくと疼いてくる下半身。
じれったい。
だが犬夜叉とて同じはず。否、己以上に。
ならば早くその先の快楽を追えばよいものを。
そこで殺生丸はとんでもないことを思いつく。
トンッ
己に跨り覆い被さっている犬夜叉の股間を軽く膝で小突く殺生丸。
「!ッ・・・」
思わぬ急な痛み。
既に硬く敏感になっている竿を足蹴にされ、上体を起こした犬夜叉は困惑した面持ちで殺生丸を見た。
ドンッ
又も殺生丸は犬夜叉を蹴る。しかも今度は腹。
「ッ・・・??・・・何だよ!?・・・??」
まさか二度も蹴ってくるとは想定外で、体勢を崩し危うくひっくり返るところだ。
尻もちをつき、さすがにムッとする。
突然何だというのだ。
行為が嫌なのか?
それともやっぱりまだ身体が完全には治っておらず受け入れられる状態にないのだろうか。
わけが分からず、足蹴にされたことへの怒りと心配が入り混じった目で殺生丸を睨む。
だが殺生丸は。
「!」
自らも上体をゆっくりと起こし、微笑する。
惨忍さを奥底に秘めた妖しく綺麗な顔。
思わずその顔に見惚れた刹那。
「自分でしてみろ。」
端麗な美しい口から漏れた言葉。
「――――――・・・・・・」
は ・・・ ?
今、なんて言った・・・?
何だ・・・??
唖然とする犬夜叉。
今一度聞き返そうと伺うように殺生丸を見つめ、口を開きかける。
「・・・中々・・・扇情的で良かったぞ。お前の息遣いは。」
「!!!!ッ・・・」
知られている――――――――
見られていた・・・!?
判らない。
でもやっぱり気付かれていた。
殺生丸には苦痛を与えておいて、その当人に欲情して衝動的に自慰をしたこと。
もう逃げたい。
穴があったら入りたい。
でも逃げられない。
「・・・フ・・・」
薄ら笑いを浮かべる美しい顔。
有無を言わせない意地悪な眼。
もはや俺に拒否権なんてないのだろう。
「早く始めろ。」
めちゃくちゃなことを言いやがる。
何て悪趣味。
体を好き勝手された仕返しのつもりなのか。
クソ・・・!
動揺しうろたえている俺を見透かし愉しんでいる。
「・・・ッ、・・・」
クソ!!
袴を乱暴に脱ぎ捨て、性急に自身のそれを扱く。
その瞬間になったらその端麗な顔にぶっ掛けてやろうか。
そう思い、チラと相手を見た。
着崩れたまま岩に寄り掛かっている殺生丸。
大きくはだけて晒された素肌。
しなやかな指に梳かれた髪がサラと流れる。
その姿はまるで優雅で。
ダメだ、もう。
下半身に熱が集中し爆発的に昂る。
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