「・・・・・・そういうことかよ。」
「!?・・・」

そういうこと・・・?
・・・違う・・・

「・・・ずっと避けてたのも・・・つまりそういうことだったんだな。」
「・・・・・・」
「弥勒の次は死神鬼か?」

違う、違う・・・!!

本当に隠したかったのは。
言えなかったのは。

・・・だが誤解されて見限られるなら丁度良いのではないか。
どうせ決別は決まっている。
もうこのまま・・・・・・

でも・・・・・・!!

「っ・・・犬夜叉、私は・・・」
「・・・・・・」

その時ふと見た犬夜叉の顔。

―――・・・ッ」

殺の背筋を戦慄が走った。

この弟のこんな顔は見たことがない。

怒りと哀しみ・・・憎悪を滾らせた眼――――――

「フッ・・・・・・久しぶりに戻ってみれば・・・男を連れ込んで・・・・・・最低だぜ。」
「・・・違う・・・」
「ああ?」
「連れ込んだわけではない・・・・・・」

声が震える。
身体が・・・・・・

「ハッ!・・・何が違うんだ、何で生きてるんだか知らねーが死神鬼なんぞに大人しく抱かれてるソレはなんだよ!?もう誤魔化しなんか効かねーんだ、自分の状況見てから言え!!」
「・・・っ・・・」
「俺が馬鹿だったんだ、理由なんかどうでもいい、避けられ続けるまま俺も姿を消せば良かったんだ!!」

激昂し叫ぶような腹から搾り出すような声。
犬夜叉がこれほど怒りを露わにしたことなど今までなかった。

胸が苦しい。
頭が重い。

ゆらりと近付く犬夜叉。

「・・・殺・・・」

名を呼ぶ低い声。

獲物を見るような鋭い眼。

殺られる。

そう思った。

その瞬間を覚悟した。

「・・・・・・」
「・・・・・・!」

だが殺の着物が赤く染まることはなかった。

殺をじっと見つめる犬夜叉。
犬夜叉はギュッと拳を握り締めた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・お前の望み通りにしてやるよ。」
「・・・・・・」
「もう、お前は自由だから。・・・好きにすればいい。」
「!!・・・」

自由・・・?

・・・どういう意味だ・・・

否、分かっている。

犬夜叉はつまり“別れる”と言ったのだ。

確かにそれを望んだ。
だがそこに第三者の介入などないはずだった。

「犬夜叉・・・」
「・・・・・・」

犬夜叉の顔にもう怒りはなかった。
ただ諦めたように沈んだ顔がそこにはあった。

「・・・ッ・・・」

もう訳が分からない。

なんて矛盾。

ただもう一度だけ触れたいなどと。

殺は腰を抱く死神鬼の腕に毒爪をかざした。

「!!・・・ツ・・・っ」
「犬夜叉・・・っ」

痛みに弛んだ死神鬼の腕を抜け出し、犬夜叉に触れようとする殺。
だが、受け入れ支える腕はそこにはなかった。

殺が犬夜叉に触れる前に、犬夜叉がスッと踵を返したのだ。

無言の拒絶。

「!!・・・」

見限られた。

・・・視界が歪む――――――――

「・・・い・・・――――

殺はその場に崩れるように倒れた。

「殺・・・!!」
「!?」

死神鬼の声と異変に気付いた犬夜叉が振り返ったのは同時だった。

「!!!!」

すぐ足元には地に伏した殺の姿。

「せ・・・ッ」

何で?

何故こんなことになってる。

「殺!!・・・ッオイ!!どうしたんだ!!」





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