まるで女のように手練手管に長けた奈落の愛撫。
体の相性も相俟って互いに何度達したか分からない。
とくに奈落のそれはいうなれば絶倫。

「・・・ッ・・・」

これで何度目だろうか。
筋張った肉筒は容赦なく死神鬼を突き上げ、その腹の中で熱を噴き出す。

「・・・ハ・・・ゥグ・・・」

息が整うより先に再び死神鬼の中で硬く膨張し、そのまま繰り返される交合。

「ッ・・・」

恍惚となるほど酔いしれた快感も次第に苦痛に変わる。
奈落のそれは衰えることを知らない。
数多の妖怪からなる奈落の体は“部分的に組み替えることが出来る。
そして変化することも出来るのだ。

ズンッ

「!!ッ・・・ハッ、ハァ、ハァ、・・・」

突如、己の中で形を変えた性器に死神鬼の体が強張る。

「力を抜け。」

脚を担ぎ上げたまま死神鬼を見下ろす奈落の低く囁くような声。
惨忍な微笑。

執拗な行為。
得体の知れない化け物の相手などするべきではなかった、と死神鬼は行為の途中から悟っていた。
とうに快楽など過ぎている。
だが今更引き返せない。
止めてくれ、と懇願するのを奈落は待っている。
これはもはや己を屈服させる為の遊戯なのだ。
この死神鬼が気付かないとでも思うか。
ならば飽きるまで相手をしてやる。
そしてその暁には冥界へ葬ってくれるわ。

微塵の労りもない激しい揺さ振りの中で密かに画策するが、死神鬼は奈落という生命体の恐ろしさと本質を分かっていなかった。

グチュッ

「ッ・・・、ゥ・・・」

卑猥な水音を立て、勢いよく抜かれた異様な塊。
根菜のように硬く勃ち上がったままの奈落のそれ。
ようやく解放された死神鬼の蕾からはこれまでの行為による精が筋となって足を伝う。

奈落の状態からすると達しはしたが、もう出るものも出ないのだろう。
だから退いた。
そう思った死神鬼はクッと笑い、己の武器に目をやる。
もう互いに用は無い。

「・・・所詮、この程度か。」

死神鬼は武器に手を伸ばす。
だが、その手を奈落が掴む。

「どうした?・・・まだ終わりではないぞ。これからだ。」
「!!?・・・!!」

己を掴んでいる奈落の手が触手へと変わってゆく。
手だけではない。身体に亀裂が入り解体するかのように四肢がバラバラに分裂してゆく。
それと同時に中から這い出てくる無数の触手。
奈落の首から下は触手の蠢く巨大な肉塊へと変化した。

「・・・醜悪な。」

ザンッ

死神鬼は嘲笑い、己を掴む触手を引き裂いた。
だが、すぐに触手は結合する。

「ククク・・・言ったはずだぞ。わしにそんな攻撃は効かん。」
「チッ!」

死神鬼はそれでも触手を引き千切り立ち上がろうとするが、その場に崩れた。

「・・・ッ・・・貴様・・・」
「ククク・・・」

奈落の体内は瘴気で溢れかえっている。意図せずとも交わった相手にそれを注ぐことになるのだ。
殺生丸に効かないように、本来であれば死神鬼にも瘴気はほとんど効かない。
だが止めどなく直接体内に注がれては浄化が追いつかない。
毒気に侵され死神鬼はしばらく動けないだろう。

「!」

触手が死神鬼の武器を弾き飛ばし、死神鬼を囲み始める。

「・・・ッ・・・ふ、わしを喰らおうというのか。」
「・・・否・・・冥界の力を司る者は取り込めん。お前の体内でそれが判った。」

奈落は散々挿入する中で、それも確かめてもいたのだ。

「・・・だがお前は強い。・・・犬夜叉を倒すというのならこの奈落、力を貸すぞ。四魂のかけらを授けよう。さすればお前の顔も元に戻ろう。」
「・・・フ・・・くっく・・・」
「どうだ?悪い話ではあるまい。」
「・・・フン、わしは四魂の玉になど興味はない。そんな力を借りずともあの犬共はわしが冥界へ葬る。貴様のような醜い化け物と結託する気もない。」
「ふ・・・」
「それが貴様の真の目的か。宛が外れたようだな。」
「・・・本当の目的、というならば・・・お前を取り込むことでも味方に引き込むことでもない。殺すことでもない。」
「・・・・・・」

では何なのだ、と訝しげに死神鬼は奈落を見据える。

「わしの体は見ての通り・・・数多の妖怪の集合体から出来ている。」

見れば既に周囲は色も形も異なる触手同士が何百匹と絡み合い、まるで巨大な鳥籠のようになっている。

「この奈落と結合していてもそれぞれが個体の妖怪。抑制したままでは気が荒み扱いづらくなるのでな・・・ひと月に一度溜まった熱を放ってやらねばならんのだ。」
「・・・・・・」

そこまで聞いて容易に想定出来るこの先のこと。
死神鬼はゾクリと身震いした。

「今宵がそのとき。・・・その相手を探していたところ邪気に引かれた。そしてお前が居た。」
「ッ・・・!」

粘液を滴らせながら四方八方から触手が死神鬼に向かって伸びてくる。

バシッ

触手を払い除け引き裂くがきりがない。
二の腕、手首、大腿、足首、腰、胸・・・体中に触手が絡み付き死神鬼の動きを封じてゆく。

「!!・・・クッ・・・!!」

次第に死神鬼の体が持ち上がってゆく。
まるで鳥籠の中に張られた蜘蛛の巣。
そこに操り人形のように吊るされた死神鬼。

「・・・壊れない玩具を探していたのだ。男でも女でも大抵の者は瘴気に毒され・・・あるいは行為に耐えられず途中で息絶える。だからこれまでは一晩に何人も充てがう必要があったが・・・今宵はお前一つの肉体で存分に愉しめそうだ。」

「・・・チッ・・・、!!」

触手は蠢きながら死神鬼を仰向けの体勢にさせ、両腕は後ろ手に締め上げる。
そして腰を僅かに上向かせ脚を開脚させた。





 

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