相生    10P




 


 深夜。
 一旦は自分の部屋に戻ったものの何故か心が落ち着かなくてなかなか寝付けず、俺はリビングのソファーに横たわり、月明かりの中軽く目を閉じぼうっとしていた。

 殺生丸はここでよくワインを飲んでいたな・・・
 こうしていると殺生丸が傍に居るように感じる・・・

 その姿を思い出し俺はうとうとし掛かった。
 だが、ふと感じた気配にハッとし、目を開けるとそこには殺生丸が立っていた。

「!!・・・」

 一瞬夢なのか現実なのか分からなかったが、殺生丸はソファーのすぐ傍で腰を屈め、俺に毛布を掛けようとしていた。

「・・・こんな所で寝ていたら風邪を引くぞ。」
「・・・・・・ああ・・・、部屋だと寝付けなくて・・・」
「なら、せめて毛布くらい掛けろ。」
「・・・・・・もう部屋に戻るよ。」

 ヤバイ。こんな夜中に。
 不意打ちを食らった状態。
 殺生丸が傍に居ることにドキドキして急激に欲求の波が迫り上げてくる。
 今近寄られると抑えられる自信が無い。
 自身が兆している事に気付き、俺は起き上がり早々に部屋に戻ろうとした。

「寝付けないなら、相手をしてやるぞ。・・・今夜は何でも聞いてやる。」
――――

 聞き間違いかと思った。
 俺は寝ぼけている。
 試しに振り返り相手を見ると、相手は真っ直ぐこちらを見ていた。
 聞き間違い・・・じゃない。

「・・・・・・こんな夜更けにポーカーでもやんのかよ?」
「・・・・・・お前がそうしたいならな。寝付けるまで付き合ってやる。」
「・・・ふっ。やんねーよ、ポーカーなんか。・・・じゃ、添い寝してくれって言ったら?」
「一緒に寝てやろう。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ホントに何でも聞くのかよ。」
「ああ。」
「・・・・・・・・・どういう意味で言ってんの・・・・・・?」

 妙な言い回しをするな。期待しちまうだろ。

「そういう意味だ。」
「・・・・・・殺生丸・・・・・・」

 何でだよ。
 どういうつもりで。

 けど、もう。理屈はどうでもいい―――――――!!



 俺は、殺生丸に抱き着いた。
 暗がりに差し込む月明かり。青白い光に縁取られる身体。浮かぶ綺麗な眼。
 合意の上なら病み上がりだからって遠慮はしない。
 同情のつもりなのか。餞別のつもりなのか。何であっても一切の理由が俺には関係無い。

 シャツのボタンを外し鎖骨から肩へと弄り舐め上げる。
 相手に抵抗の色が無くとも、行為に対する無意識下の拒否反応で体に力が入る。だが力の比重は俺のほうが大きい。愛撫されることで斜めになり俺の体重を支えきれなくなった殺生丸の体が倒れる。
 双方の体勢が崩れ、必然的にソファーに倒れ込んだ。そのまま圧し掛かり首筋に口付けるが、やはり場所が狭い。夢中になっているとすぐにソファーからずり落ちそうになる。それに無理矢理の快楽を強いたいつかの場面やこれまでの暴虐を思い出して辛くなる。
 俺は殺生丸を横抱きに抱え上げ、自身の部屋へ向かった。

 俺の部屋に殺生丸が入るのは初めてだ。
 相手の部屋とは対照的に散らかし放題のむさ苦しい部屋。
 でも今まで自分の寝室に殺生丸を連れ込まなかったのは部屋を見られたくなかったからじゃない。勝手な妄想で散々自慰していた汚らわしいベッドに相手を寝かせたくなかったから。

 ベッドに殺生丸を降ろすと同時に覆い被さり、掻き抱くように殺生丸の腰を引き寄せ、肌を貪る。

「ハァ、ハァ、・・・ッ」
「ァ・・・っ・・・ハァ・・・ッ」

 互いに荒くなってゆく吐息。
 脚の間に割って入り、大腿から根元までを舌でなぞり上げたとき、殺生丸の身体がビクついたが、俺は構わずその根元から先までを舐めた。
 相手のそれが兆したところで俯けさせ、腹を持ち上げて両の大腿を限界まで開かせた。
 殺生丸は俺に腹を持ち上げられたことで膝立ちになり、腰だけ突き出したような体位だ。
 熱り勃つ自身を早く投じたい。その悦さを知ってしまっているだけに欲求に支配されそうになる。
 でももう欲望をぶち込むだけの行為はしたくない。結局やっている事は同じ、相手が感じる負担も同じだとしても。

 唾液で濡らした指をそこに当てたとき殺生丸の身体が強張ったのが分かったが、俺はゆっくり奥へ挿入し悦の箇所を探った。

「・・・ッア・・・ッ」

 反応のあった部分を緩く押すように擦りながら前を扱くと、次第に相手のそれも張り詰めた。

「犬夜叉・・・ッ、もう・・・!!」

 今までのように相手を達かしてからでも良かったのだが、俺は相手が達する寸前に指を抜き、既に先走りが溢れヌルついた自身を殺生丸のそこに当てがった。

「・・・殺生丸・・・」
「!?・・・ッ」

 頭では性行為を理解し受け入れるつもりでもやはり腰が引けたのだろう。その感触に殺生丸は逃げようとした。
 だが俺は殺生丸の身体を捕まえ、反転させた。
 再び仰向けになった殺生丸の腰を素早くがっしり掴み、両の脚を肩へ担ぎ上げた。
 こんな体勢にさせておいて問うことでもないが、意思の肯定が得られないなら無理強いはしたくない。

「殺生丸・・・いい・・・?」
「・・・・・・」



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