かすみの楔 −贖罪−
「・・・ッ・・・犬夜、叉・・・っ」
「・・・・・・」
本当に好きにさせるつもりなのか。
大して抵抗をしなくなった殺生丸の身体を弄りながら俺は征服欲を感じていた。
いい気味だぜ。
何をしでかすか分からない相手の前で“好きにすればいい”なんて安易にそんな事口にするもんじゃない。
自分の放った言葉に言い訳をしない性格なのは知っているからな。今度は俺がお前を翻弄してやるよ。
男同士でリビングの床で絡み合うなんて傍から見たら異様な光景。
でもこの家には二人きり。
誰も止める者はいない。
いつかはこうなること・・・本当は俺は分かっていた。
出逢った時から歯車はかみ合っていないのに一緒に居るからおかしくなる。
それなのに離れられない。
優しさで包むような愛情を伝えるより先に奪うことしか考えていなかった。
だから俺がそれを望む限り遅かれ早かれこうなることはきっと必然だった。
圧し掛かるようにして腕の中に抱き込み首筋を舐めながら、相手の眼をチラと見た。
屈辱に耐えかねて爆発しそうな怒りを自分自身で無理矢理抑止している・・・そんな眼。
予想通りのイイ反応。
俺は男に抱き付かれたことなんかないからお前の気持ちは分かんねーけど、男に組み敷かれるなんて気が狂いそうなほどの嫌悪だろうな。
「!!・・・ッ・・・ア・・・ッ」
唾液で濡らした指を殺生丸の中へ入れると身体が強張った。
やはり痛みを感じるのか。
でも慣れるまでの辛抱だ。今夜は悦くしてやるよ。
ゆっくり中を掻き回し、探り当てたそこを指の腹で撫でるように擦ると相手の腰がビクついた。
「ッ・・・ハ・・・ァ・・・ッ」
集中的にそこを攻めながら胸の飾りやヘソの辺りを舐めていたらその感触に気付き、今度は兆した相手のそれを舐めてやる。裏を舐めたら硬度を増した。
殺生丸は快楽にのたうつ身体を自分でどうにか押さえ込もうと床に爪を立てている。
俺は一旦中断し、殺生丸の上半身を抱えるようにしてソファの上に押し上げうつ伏せさせた。床を引っ掻いて指を痛めるよりマシだろう。
相手の快楽の熱が冷める前にすぐにまた指を挿し入れ、ゆっくり掻き回しながら相手のものを握り扱く。
自分の手の中で相手のそれが完全に昂ぶったのを感じ、中に入れる指を増やし拡げるように抉りながら前を追い上げた。
この体勢だと殺生丸の表情が見られないのが残念だが、喘ぎの混じった息遣いや悶え耐えるその様子に猛烈に煽られてヤバイ熱が押し寄せてくる。
また俺のほうが先にイきそうだ。
相手への奉仕や愛撫はその分だけ自身を焦らす。
「・・・ッ・・・ッ!!」
限界を迎え明らかに逃れようとする殺生丸に俺は自分の体を密着させ押さえ込んだ。
「殺生丸・・・っ」
「ッア・・・ッ・・・!!」
手の中でビクつき、生暖かいそれが溢れる。
達した余韻で突っ伏したまま脱力している相手を抱き締め、襟足から覗く首に口付けた。
そしてもう既に痛いくらい張り詰めた自身を殺生丸のそこに押し当て、間髪入れずに奥まで埋め込んだ。
「ッ犬夜・・・ッ、アアアッ!!!」
殺生丸からかすれた叫びが上がる。
狭い部分を拡げられ異質な肉塊を飲み込まされたそこは生理的に収縮し俺を締め上げたが、俺はゆっくり腰を前後させた。
「ゥ・・・ク・・・ッ」
相手の身体はやはり痛みに強張り、堪えた喘ぎがもれる。
だが俺のそれは少し腰を振っただけでもうイきそうなほど悦楽している状態。今更止められるはずもなく半ば相手の腰を持ち上げるようにして抱え込み、性急に己を追い上げた。
何度も繰り出される激しい衝撃を受け入れるしかない相手は力を抜くことも入れることも出来ず揺さ振られるがままになっている。
今の俺には自制を掛けて快楽の波を愉しむ余裕が無い。
頭の芯まで真っ白になるようなその瞬間、付け根までを相手の中に埋め込んだ。
「ッ・・・殺生ま・・・ア・・・ッ!!」
「・・・ッ!!・・・ッ」
相手の中で熱が弾ける。
俺は自身を納めたまま殺生丸の背中に崩れた。
恋人同士ならこんなとき後戯の一つでもしてジャレ合うんだろうな・・・
満たされた余韻に浸り息を整えながらそんな事をぼんやり思い、殺生丸の髪に触れようとした。
だが苦しそうに身体が上下しているのを感じて延ばした手を引っ込め俺は上体を起こした。
男に背中に圧し掛かられては重たくて呼吸が辛かったのだろう。しかも俺に貫かれたままでは。
俺は自身が再び兆してくる前に、引き抜いた。
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