贖罪 2P
「ゥ・・・ッ」 「殺生丸・・・」 相手の様子からすると抜くときのほうが鋭い痛みを感じるのかもしれない。 でも今回は見た限り大惨事にはなっていない。少し血の流れた痕はあったが前より負担は少なかったのだろう。 他人の身のことをこちらが勝手に判断するのは危険だが。 体や床・・・あちこち付いているのはほとんど俺の血で相手のものじゃない。 イかせた上で行為をし、早漏でもないのに早々に自分も達した。双方が快楽を得たことで肉体的余裕を感じ、俺は手荒にグイと殺生丸の肩を掴み強引に仰向けさせた。 相手は辛そうに眉をしかめ俺を鋭く見やる。 ・・・自業自得だ。 本気で嫌だったら殴り飛ばして逃げればいい。 それなのにお前は俺の暴挙を受け入れることを選んだ。 ホントはそっちの気でもあるんじゃねーのか。 相手の言い分を都合良いように逆手に取り有無を言わさず犯しておいて、そんな悪魔のような事を思った。 だってどう足掻いても関係性が変わることはないと解ったから。 もうどうでもいい。 「・・・・・・次は玩具()でも使おうかな。」 そんな気もないのにわざと相手を脅すようなことをボソリと言い、殺生丸を放置したまま俺はその場を後にした。 朝起きると殺生丸の姿はなく、気配もなかった。 玄関へ行きキャビネットを開けるがいつもの靴もない。 会社へ行ったのだろう。 驚いたのはリビングが綺麗に片付いていたことだった。 割れたグラスの破片も。 互いの精や血で汚れたソファや床も。 脱ぎ散らかしたままだった服も。全部。 俺はあの後自分の部屋に戻り、切れた手の上に適当にティッシュを重ねセロハンテープで止めてベッドで横になっていた。 何か腑に落ちないのは抱くつもりで抱いたからではないからなのか。悶々とした苛立ちが募り、後始末の事など全く頭に浮かばないままそうしていつの間にか寝入っていた。 だから殺生丸がいつどうしたのかは分からない。 とにかく無理を押して片付けたのは言うまでもないだろう。 そして今頃目に付いたテーブルの上に置かれた物。無性に腹が立った。 これ見よがしに置かれた救急箱。 ・・・何だよ、何なんだよ!! 俺はテーブルに思い切り拳をぶち込んだ。 「・・・チッ!」 壁も蹴った。 本当は朝起きてから自分で適当にガーゼくらいは巻くつもりでいたが、もう救急箱を触るのも嫌だった。 痛め付けた相手にこちらの身を案じられるのは時として神経を逆撫でする。 どれだけ凌辱しようと相手は余裕の境地からこちらを見下ろしているようで。 まるで哀れみを含んだ無言の嘲弄。 ・・・俺が殺生丸への執着を絶てば解放される。俺も。殺生丸も。 でもそんな分かりきったことが出来るならこんな現状にはなっていない。 俺の熱が冷めるのを待っているなら無駄だ。 俺を殺さない限りこの狂った連鎖は終わらない。 開いた傷口から血がじわじわと滲む。 今になって手が、痛い――――――――― 俺はそれからも殺生丸を抱いた。 行為を仕掛けてもあいつは拒まなかったから。 ギリギリ保っていた道義心は殺生丸を初めて抱いたあの夜にバラバラに砕け散っている。 この一月で俺はすっかり堕落した。 編入学した高校を卒業し名門とうたわれる大学へ入ったのに今じゃ、単位こそ落としていないが行ったり行かなかったり。 欲に溺れた堕落生活。 いいんだ。これで。 都内屈指の名門だろうと、俺にとっては成り行きで受験してたまたま受かってたまたま通うことになっただけの価値。 歴史の名声がどうであろうとその価値を感じるか否かは当人だ。 興味はない。 それに大学のくだらないサークルだとか合コンで性欲丸出しで大して好きでもない女にアピールしなくても家に帰れば俺には殺生丸がいる。 好きなときにヤれる。 俺にとっては今が至上の生活だ。 ・・・・・・たとえ自分の身を滅ぼすことになろうと。 破滅へのカウントダウンならとっくに始まっているんだ。 あいつだって馬鹿じゃない。俺が“飽くことはない“と分かれば、そのうち自分から何かアクションを起こすだろう。 俺に懇願するのか激怒の中で俺を追い出すのか。 そのうち来る現実。 だからそれまでは夢を見る。 |
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